Case 1: 宇宙開発

小惑星探査機「はやぶさ」・「はやぶさ2」に応用
過酷な宇宙環境に耐えうるMIL規格電線

© JAXA

宇宙の仕事は中途半端な妥協を許すものではない。
最上級の信頼性が要求されるうえに、宇宙の苛酷なまでの環境にも耐えうる技術しか必要とされないものである。

宇宙規模の耐久性

例えば、人工衛星。太陽にさらされるか否かで-200℃以下の超低温から+200℃以上の超高温となり、かつ、地球を周回することで常に温度変化を繰り返す環境におかれる。また、大気圏とは異なり強烈な紫外線にもさらされる。この熱変化と紫外線は、ケーブルの絶縁材料として使用されるプラスチックが分解を起こす主原因となり、通常は安定剤を添加することで分解を抑えている。
しかし、宇宙の用途ではその方法は許されない。添加剤すら分解してしまう環境だからだ。また、人工衛星は一度宇宙に放たれたら修理不可能なため、長期間壊れないことが大変重要となる。

小さな部品の大きな可能性

潤工社には、これまで培ってきたポリマー選定とケーブル設計技術をいかして、この厳しい条件を達成するための技術的で定量的な目標を設定できる知識と知恵があった。また、潤工社は宇宙環境でも使うことができる高耐久な米国MIL規格電線・ケーブルを製造している数少ない日本企業である。航空宇宙用機器などの究極の使用環境に耐えうる製品をつくり込むことで、自社の技術レベルに磨きを掛け、顧客の開発を助け、より良い社会創りに貢献できるのだ。

定量目標はJAXA(宇宙航空研究開発機構)で確認・承認され、新たな開発が始まった。宇宙用途のワイヤ・ケーブルを知り尽くしている潤工社エンジニアたちも、「はやぶさ」のミッションを知るにつれ、これまで以上の長期信頼性と耐久性が求められることを理解した。納入する製品についても、考えられる全ての項目について複数回の検査を行った。民生品をはるかに上回る膨大な項目の試験、さらに、出荷するロットごとに温度変化や燃焼試験を実施。その全てをクリアして、厳しい品質基準を満たし、過酷な宇宙空間に長期間耐えうる製品の提供が適った。

「はやぶさ」「はやぶさ2」は、地球から最も遠い地点に到達し、太陽系の成り立ちを解き明かす壮大なプロジェクト。ワイヤ・ケーブルという宇宙機器を構成する小さな部品、その一つひとつが、宇宙研究を加速し、人類の新たな可能性を切り開くことに貢献している。そしてその一助になりたい。そんな熱い信念を持って、今日も技術開発を向上すべく奮闘している。

※掲載の写真は取材当時のものです。

ワイヤ・ケーブルという
宇宙機器を構成する小さな部品が
人類の新たな可能性を切り開くことに貢献