Case 4: 医療
エンジニアたちの執念が生み出した
世界初・フッ素ポリマー引裂性熱収縮チューブ
潤工社は、複雑な構造が要求されるカテーテルの製造工程で不可欠といわれる熱収縮チューブの分野に参入した。
しかし、お取引先のカテーテルメーカーで見たものは、非常に難易度の高い工程であった。
カテーテルは、体内の病変にアクセスしやすくするために、手元は太く硬いが、先端が細く柔らかくなっている。複数の異なる硬度の材料でできており、それらをスムーズに接合するために熱によって収縮するチューブで覆い、加熱収縮のうえ、融着・一体化させる。接着剤は使用しない。できあがったものを冷却して使用済み熱収縮チューブを取り外すのだが、この作業が難関である。
肉厚がたった0.2mmほどの熱収縮チューブを、作業員がカミソリで切り目を入れて手で引き裂くのだ。誤って本製品自体に傷をつけて歩留まりが悪化し、コストを押し上げる要因になっている。特に困難を極めるのは、極めて細いマイクロカテーテルである。お客様からため息とともに語りかけられた。「もっと簡単に取り外せるチューブがないだろうか」と。
潤工社の担当エンジニアも実際にこの作業を行ってみたが、カミソリでしっかりと切れ目を入れてもなかなか直進性をもってチューブが引き裂けないことに愕然とした。そこから、実験の繰り返しが始まる。これまでのものと同じように強靭でありつつ、「裂けるチーズ」のように思う方向に簡単に引き裂ける......。
イメージは明快だが、強靭性と引裂性という相矛盾している機能を両立させないといけない。明らかに技術のブレイクスルーが求められていた。
失敗に失敗を重ね、途方にくれていたエンジニアたち。そんなある日、以前にあるエンジニアが配合をミスした材料が彼らの目に留まった。これがなぜか、強靭にして簡単に引き裂けたのだ!
検証してみると、狙い通りのミクロな自己集積構造が出来ていることが確認された。その構造にするための必要条件と思っていなかった配合が、実は答えに繋がっていたのだ。失敗した実験をそのままにしておかなかった彼らの執念がなしえた成功と言えるかもしれない。
裂け性を付与すると熱収縮チューブ自体が製造工程で裂けるという難関があったものの、ブレンドの割合や分散状態など最適な割合を追求し、ついに製品化に至った。
この技術で作り出された世界初のフッ素ポリマー引裂性熱収縮チューブは、予想以上にお客様に喜んで迎え入れられ、潤工社のヒット商品として成長して行くことになる。
歩留まりやコスト効率向上につながったと、現場の作業員からも大好評。
失敗から生まれたこの自己集積構造の制御技術はブラッシュアップされ、熱収縮率も世界初の2.5:1という驚異的な値を実現。いまも応用範囲を広げているのである。
人々のQOL(生活の質)向上のために開発を続けるお客様の事業の加速、および品質向上に貢献するために。
潤工社は今後もお客様の声に深く耳を傾け、最適なソリューションを提供していく。
※掲載の写真は取材当時のものです。
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潤工社は最適なソリューションを提供していく