ワイヤ・ケーブル許容電流計算式
絶縁電線に常時流し得る最大電流値を許容電流といいます。この値は電線連続使用時の上昇可能限界温度と、雰囲気温度及び配線環境によって求めることができます。
a) Junkosha フッ素ポリマー電線の許容電流計算方法
b) 電線ケーブルの許容電流の求め方
前記の計算式では、“Ρa = Ρbを満たす温度Τ[℃]”の近似値を求める必要があります。次項では代表的な電線の計算結果を示します(図1.2.1~図1.2.8)。図中で常気圧中とあるものは、周囲温度20℃の空気中において電線を水平に1本張り、気体の流動が全く無い場合(無風状態)での電流対温度上昇を示すものです。
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電線の使用雰囲気温度、導体または絶縁体連続最高使用温度あるいは、周囲にある他の部品の状況による温度上昇可能限界から、“導体上昇温度”(ΔΤ)を決定します。一般的には、電線ケーブルの定格温度を上限温度としています。
- 1.で求めた導体上昇温度ΔΤに対する、導体外径又は電線構造別の直線の交点から、電流値[A]を読み取ります。
- 真空中の場合は常気圧中の値の約1/2~1/3となります。真空中の場合の計算例を図1.2.2に示します。高圧ガス中で使用する場合は図1.2.9、高々度で気圧の低いところで使用する場合は図1.2.10の補正係数を常気圧中の値に掛け合わせます。
- 多本数を束ねたり、並列に配置して使用する場合は、束本数補正係数を掛け合わせます。
- 高周波(400Hz以上)電流の場合は、図から求めた電流値に交流抵抗を考慮した補正係数 √(1/Ks) を掛け合わせます。
- 銅合金線などの導電率が100%IACSでない導体の場合は、図から求めた電流値に導電率(%IACS)を考慮した補正係数 √(導電率/100)を掛け合わせます。
許容電流値は
- 導体断面積が大きくなると、大きくなります。
- 気圧が高くなると大きくなり、低くなれば小さくなります。真空中では常圧の約1/2~1/3となります。
- Junkosha フッ素ポリマー電線では、ΔΤを大きくできるので、許容電流は大きくなります。また逆に同じ許容電流を希望する場合は導体断面積を小さくできます。
- ΔΤが同じであれば、絶縁体の種類及び厚さにほとんど影響を受けません。絶縁体の厚みが多少違っても導体外径、または断面積から読み取った電流値が使用できます。
c) 許容電流計算結果
図1-2-1 機器配線用電線の常気圧中での許容電流
図1-2-3 機器配線用電線(撚線導体)の常気圧中での許容電流
図1-2-5 MIL DTL 16878電線(単線導体)の常気圧中での許容電流
図1-2-6 MIL DTL 16878電線(撚線導体)の常気圧中での許容電流
図1-2-7 ロボットケーブル用電線(Aタイプ)の常気圧中での許容電流
図1-2-8 ロボットケーブル用電線(Cタイプ)の常気圧中での許容電流
図1-2-9 高圧ガス中での許容電流増加係数(潤工社実測による)
図1-2-10 空気中での高度による許容電流補正係数
(SAE-AS50881(旧MIL W 5088L)による)